Museum Nasional Indonesia:インドネシア国立博物館の火災から約1年、再開館の衝撃

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インドネシア国立博物館は、2023年9月16日に工事用の小屋から発火し(漏電と言われている)、先史時代の展示エリアが燃えたという衝撃的な事故があった。美術館博物館が火事になるということ自体が驚きであるが、日本でも首里城が燃えてしまったことは記憶に新しい。そもそも博物館施設には防火扉はもちろん、災害対策はかなりしっかりしており、火災においてはハロゲン消化設備設置が通常だと思うが、インドネシアはどういった規定があるのだろうか。
燃え盛る炎に包まれた博物館の映像はかなりショッキングだったが、その博物館が2024年10月15日から再開するということで、どんな風に復活したのか見に行ってきたが、これがかなり衝撃的だった。

ここにはかつてもっとたくさんの石像がかなりランダムに設置されていたが、移動整列して綺麗になっていた。
リニューアル開館はこの石像移動も目玉だったとのこと。ここは燃えなかったのだろう。

以前はキャプションなどなく、屋外にゴロゴロゴロとダイナミックに置かれていたが、一部の石像は屋内に入って一安心。簡単だがキャプションも付いている。

ここからが被害に遭った作品や、復興までの足跡を辿る今回のリニューアルオープンの目玉展示エリア。
だが、想像していた斜め上の展示だった。

燃えてしまった各エリアから集めてきた瓦礫、木片、石、ガラス片など。

燃えてしまった作品の燃える前の姿との比較。破片の展示。

燃えてしまった作品を掃除した道具たちの展示。

火災時のニュース映像の放映。

極め付けは、火災現場そのままの展示。
リニューアル、というより、火災現場、被害に遭った作品のありのままを見せる衝撃的な展開で始終興奮して見た。
こんな展示が未だかつてあっただろうか。
美術作品の破損というのは、社会問題に発展する一大事件だと思う。少なくとも日本では、たぶん偉い人たち数人の首が飛ぶどころでは済まない大事件だ。作品台帳から作品1点抜けているだけでも、それはその博物館美術館の信用問題に当然発展する。また、所蔵者寄贈者含めて説明責任があるし、国が保存管理していた物であればその責任は尚更大きなものになると思う。
しかし、この展示だ。
ありのままを見せて、この事故を契機に、インドネシア国立博物館は今後施設のリニューアルはもちろんのこと、もっと広く文化遺産を普及できるようなインタラクティブなスペースに発展していこうと、かなり前向きな方向性を見せている。破損してしまった作品も、補修するのではなくて、元の姿を3D映像で再現してどでかく投影したりしている。世界に1つしかない作品の唯一性、本物性を重視するかしないかの差かもしれないが、その保全補修のやり方にも驚かされる。これは国民性の違いなのか、文化の捉え方の違いなのか。でも、博物館や作品を後世に繋げ、広く国民に普及したいという願いは皆同じなのである。

燃えた現場にも立ち入ることができるのも衝撃的。
燃えてしまった所は、次はこんな風にしたいという未来予想図写真が展示されていて、今現在とのギャップに唖然とする。ここは普通に足場が組まれていて、工事のおじさんたちが工事をしたり、休憩したりしている様子を間近に見ることができる。果たしてこれも含めて展示なのだろうか。頭上で工事の火花が散るのを感じながら、割れた窓、瓦礫を眺めるという日本ではあり得ない体験に戸惑う。包み隠さないインドネシアのその心意気は本当にすごい。

燃えていないエリアも展示が組まれていたが、そちらは撮影禁止。なぜ燃えたところは良く、一般展示はダメなのか疑問だ。オランダなど海外貸出をしていた作品が最近帰ってきて、それらをまとめた展示だったが、考えようによっては火事から守られた作品たちとも見て取れる。
燃えていないエリアもほとんど半分以上立ち入ることができなくなっていたので、何らかの補修をしているか、次回展示に向けて準備しているのかもしれない。以前あった展示物がごっそり無くなっていたので、これからが本当に大幅リニューアルとなるのだろう。

事故が起きてしまった後、どのように再出発をするのか。
博物館美術館の火災は滅多に起こらないからこそ、起きてしまった後どのように対応したのか、そういった経験は世界的に見ても貴重な事例になると思う。日本でも東日本大震災が起きた際、日本中、あるいは世界の美術館博物館から多くの学芸員や補修担当が被災地に派遣され、作品のレスキュー、保全に当たった。それらの活動調査記録は丁寧にまとめられ、日本全国の美術館博物館がそれらの事例に当たることができるようになっている。今回のインドネシア国立博物館の火災も、そのような報告書がまとめられ、リニューアルまでの軌跡を辿ることができるようになると思う。インドネシアの美術館博物館施設の災害対策がどのように取られていて、今後どのように変わっていくのか。とても興味深く追っていきたいと思う。

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