会期:2023.06.24-2023.10.08 会場:Museum MACAN
アーティスト:Isabel & Alfredo Aquilizan(イザベル&アルフレド・アキリザン)イザベルとアルフレドは共にフィリピン生まれのアーティストユニット。夫婦でもある彼らは、旅や土地の記憶、人々の生活などをテーマに、その土地の人々と協力しながらモノを収集して、大規模なインスタレーションや作品を制作している
イザベル&アルフレド・アキリザン(Isabel & Alfredo Aquilizan)は、フィリピン出身のアーティストユニット。移住や旅をテーマに、現在は家族と共にオーストラリアで活動している。

展示室の初めに現れる巨大な作品《In-Habit: Project Another Country (Here, There, Everywhere》(2018)は、彼らの代表作で、引っ越しを連想させる段ボールを用いて、世界中様々な場所で展開されている。今回展示されていた作品は、真ん中に人が入り込めるようになっており、ここで撮られた写真がSNSにたくさん上げられていた。
普段見ている段ボールが、こうして壮大な作品になっているのを目の当たりにすると嬉しくなる。
私は、こうした生活にある身近なモノを使った作品が好きだ。どう見たってゴミである素材が、人の手によって集められ、時間をかけて手をかけて、人を喜ばせるものに変身する。手にする人によって、モノがゴミにもアートにもなる。そういうことを小さな息子にも感じ取ってほしいと思う。
展覧会は大規模な主要インスタレーション、映像作品をまとめて見ることができ、イザベル&アルフレド・アキリザンのこれまでの作品を概観できる、非常にいい機会となった。やはりこういったインパクトのあるインスタレーション作品は、その場に身を置かないとわからないことが多い。カタログでは全体像が綺麗な写真で見られるため勉強にもちろんなるが、匂いや雰囲気や質感みたいなものを直接見られるのは本当に嬉しい。

越後妻有でも以前展示されていた、人々が使っていた毛布を収集した作品《Installation view of Dream Blanket Project: Project Be-longing (2002–2023) and Project Be-longing (1999–2023)》は、息子がとても怖がっていた。クリスチャン・ボルタンスキーの古着の山のそうだが、単体としてはただの「服」「毛布」なのに、不思議と布の集合体は何か人の気配をそこかしこから感じる。より肌に近いモノであるせいなのか。匂わないはずの、誰かの匂いを感じてしまう。作品の意図や由来がわからない息子でも感じる何かが確かにここにある。

息子は《In-Habit: Project Another Country》(2010–2023)をよく見ていた。
小さな家を一つ一つ、中に何が入っているのか誰か住んでいるのか確認するように見て、言葉もわからないだろうが小さな子どもたちのインタビューを一生懸命聞いていた。彼なりに、子どもたちの何か寂しい気持ちを感じ取ったのか、少し心配そうに「この子のお家は何かあったの?どれなの?」と問いかけてきたので、展示作品の中から一緒に探してみた。

今回の展示で素晴らしいと思ったのは、展覧会会場手前にある子どもたちのワークショップ作品を展示してあるスペース。会期中行われた子供向けワークショップ「Children’s Art Space: Kisah Kotak Sepatu」(靴箱の物語)で子どもたちが自由に制作した靴箱の家たちが部屋中に天井まで展示されていて壮観だった。
一つ一つに小さな個人的な物語が込められていて、彼らが好きなもの、大切にしているもの、欲しいものがよくわかって微笑ましく感じた。どんな子が作ったのか、想像しながら時間をかけて上から下までじっくり見る。
息子はこの部屋に1番長い時間滞在していた。ミニカーや恐竜、手作りの家具や洋服、動物や本、ビー玉に紙吹雪、様々な方法で表現された自分だけの小さな家たち。今でもMACANに行くと、この展示がまた見られるのではないかと、「小さいお家のお部屋をまた見たい」とせがむほど気に入っていた。
誰かの大切なものを見る、興味を持つ、触れるというのは素敵な経験だと思う。自分以外の誰かを知るということ。それぞれが大切にしている世界が、人の数だけ自由に無数に存在するということ。
今は移住者の私たち。日本で暮らしている時とは「家」に対する考え方も感じ方も少し変わってきているかもしれない。
インドネシアに移住を決めたことは大きな決断ではあったが、他民族国家のこの国でマイノリティとして生活していくこと、移動した先で出会った人たちと関係を作っていくことは、息子にとっても私にとっても試練でありながら大きな経験になっていると思う。段ボールで作られた小さな家たちを見ながら、この先どどこでんな家に暮らしていくのか、想像が膨らんだ。


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